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排他的経済水域 / 領海 / 大陸棚

排他的経済水域ってなんだ? 海の地図で見る日本の大きさ

ニュースで「日本の排他的経済水域で調査船が」「排他的経済水域内の資源が」と聞いても、すぐには意味がつかみにくい。英語の略語では EEZ とも呼ばれるが、略語だけ出されても、どこの海で、何ができて、何ができないのかはわからない。

排他的経済水域とは、ざっくり言えば「沿岸国が、魚や海底資源などの経済的な利用について特別な権利を持つ海域」である。大事なのは、そこが領土ではないことだ。国が海そのものを土地のように所有するのではなく、資源を調べ、管理し、施設を置き、海洋環境を守る権利と責任を持つ。

この記事で言いたいことは一つだ。日本の大きさは、陸地の面積だけではわからない。ただし、それは「日本の領土が海に広がっている」という話ではない。領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚という線を順番に見ると、日本の周りの青い海が、魚、資源、発電、通信、島の保全を扱う仕事場として見えてくる。

まず、地図帳の青い海に線を引く

地図帳を開くと、日本列島は細長い。北海道、本州、四国、九州が弓のように並び、その周りは青く塗られている。国の大きさを比べる授業では、たいてい陸地の面積を見る。青いところは、海だとわかっていても、測る対象ではなく背景になりやすい。

海上保安庁海洋情報部の「日本の領海等概念図」を見ると、その青い場所に何本もの線が引かれている。陸地のすぐ外側に領海、その外側に接続水域、さらに外側に排他的経済水域が広がる。海底の権利を見るときには、大陸棚という言葉も出てくる。

海上保安庁海洋情報部「日本の領海等概念図」
海上保安庁海洋情報部「日本の領海等概念図」

この線は、全部同じ意味ではない。海を一枚の青い面として見ると混乱する。陸から近い海、取り締まりのための海、資源を管理する海、海底だけを見る線。それぞれの役割が違う。

領海は、国のルールが強く及ぶ海

最初に押さえるのは領海である。領海は、沿岸国の主権が及ぶ海だ。国連海洋法条約では、通常、基線から12海里までを領海として設定できる。基線とは、海の幅を測る出発線のことで、多くの場合は海岸線に沿って引かれる。

領海では、沿岸国の法律が強く働く。港の近くで船が動き、漁業や警備、事故対応が行われる場所を考えるとわかりやすい。もちろん外国船が一切入れないわけではなく、国際法上は「無害通航」と呼ばれる通行も認められる。それでも、領海はかなり陸地に近い海であり、国の支配が最も強く及ぶ範囲だ。

その外側に接続水域がある。接続水域は、基線から24海里まで設定できる海域で、税関、出入国管理、衛生などの違反を防いだり取り締まったりするための場所である。領海ほど何でもできるわけではないが、密輸や不法入国、検疫の問題を考えると、陸地から少し離れた海でも国が見ておく必要がある。

ここまでを押さえると、海の線は「近い順に国の権利が薄くなる」とだけ覚えたくなる。だが、排他的経済水域は少し違う。そこでは、国の支配全般ではなく、資源や施設や調査についての権利が前面に出てくる。

排他的経済水域は、「経済的に使う権利」の海

排他的経済水域は、基線から最大200海里まで設定できる。日本語名は長いが、分解するとわかりやすい。「排他的」は、ほかの国を何でも締め出すという意味ではない。「経済水域」は、魚、海底資源、発電施設、科学調査、環境保護など、海を利用し管理する話に関わる。

沿岸国はこの海域で、魚などの生物資源、海底の鉱物資源、海水や風を使うエネルギー利用について、探査、開発、保存、管理の権利を持つ。人工島や施設を置くこと、海洋科学調査を管理すること、海洋環境を守ることにも管轄が及ぶ。

反対に、排他的経済水域は領土ではない。外国の船がすべて通れなくなるわけではないし、上空を飛ぶ自由や海底ケーブルを敷く自由も、国際法上は残る。だから「日本の排他的経済水域」は、「日本の海の領土」というより、「日本が資源や調査について強い権利と責任を持つ海」と考えた方がよい。

たとえば、ある海域で魚を獲りすぎれば、翌年以降の漁業に影響する。海底資源を調べるなら、調査船、採取技術、環境への影響、採算を考えなければならない。風車を置くなら、漁業者、航路、景観、送電、環境調査が絡む。排他的経済水域は、地図上の広さを自慢するための数字ではなく、こうした具体的な調整を引き受ける場所である。

大陸棚は、海底と地下を考える言葉

排他的経済水域と一緒に出てきやすい言葉に、大陸棚がある。ここでまた混乱しやすい。排他的経済水域は、海の水域とその資源利用を広く扱う言葉だ。一方、大陸棚は、とくに海底とその地下を考えるための言葉である。

大陸棚というと、理科で習う浅い海底地形を思い浮かべるかもしれない。国際法の大陸棚は、地形そのものと完全に同じ意味ではない。沿岸国は、自国の陸地から自然に続く海底とその地下について、鉱物資源などを探査し開発する権利を持つ。条件を満たす場合には、200海里を超えて大陸棚の権利が認められることもある。

水面を船が通る話、魚を管理する話、海底の鉱物を調べる話は、同じ「海」でも少しずつルールが違う。だから、海のニュースでは領海、排他的経済水域、大陸棚が別々の言葉として出てくる。難しく見えるのは、「何についての権利なのか」を分けているからだ。

日本の海域はなぜ広いのか

内閣府は、日本の領海と排他的経済水域を合わせた管轄海域を約447万平方キロメートル、世界第6位の広さと説明している。日本の陸地面積は約38万平方キロメートルだから、陸だけを見た印象とはかなり違う。

この広さは、日本列島そのものだけで生まれるわけではない。北海道、本州、四国、九州だけでなく、周辺の島々、さらに遠く離れた島も、海域の線を考えるときに重要になる。島がある場所から領海や排他的経済水域を考えるため、地図上では小さな点に見える島が、海の広がりと結びつく。

ただし、ここでも「日本の領土が十数倍になる」と書くと間違いに近づく。排他的経済水域は領土ではない。広い海域を持つということは、魚を管理し、資源を調べ、他国と境界を話し合い、環境を守り、調査や施設のルールを作る範囲が広いということだ。

数字としては大きい。けれど本当に大事なのは、その数字の中で何をしなければならないかである。海図を更新する。調査船を出す。漁業のルールを作る。洋上風力の場所を決める。海底ケーブルや航路への影響を見る。海の大きさは、管理する仕事の大きさでもある。

小さな島が、大きな海の話になる

沖ノ鳥島を地図で探すと、東京から南へ遠く離れた海上に小さな点として現れる。写真で見ると、観光地の島というより、護岸で守られた岩礁のような場所に見える。外務省は、沖ノ鳥島を日本最南端の島として説明している。

ここで問題になるのが、国連海洋法条約の「島」と「岩」の違いである。条約は、自然にできた陸地で、高潮時にも水面上にあるものを島とする。一方で、人間の居住や独自の経済生活を維持できない岩は、排他的経済水域や大陸棚を持たないと定めている。

日本政府は、沖ノ鳥島は条約上の島であり、排他的経済水域を持つと説明している。中国や韓国は、この見方に異議を唱えてきた。ここで押さえたいのは、小さな地形がなぜニュースになるのかだ。海の地図では、一つの島の扱いが、周辺海域の資源、調査、航行、境界認識に関わる。

南鳥島も、海の地図では大きな意味を持つ。日本最東端のこの島の周辺海域では、レアアース泥などの海底資源調査が進められている。JOGMECは、南鳥島周辺海域でレアアース泥の開発に向けた実証試験へ着手したと発表している。

もちろん、海底に資源があるからといって、すぐ安く採れるわけではない。深い海で調査し、採取し、環境への影響を見て、商業化できるかを確かめる必要がある。それでも、地図上の小さな島が調査船の目的地になり、政策資料の地図に書き込まれる。そこに、排他的経済水域を学ぶ面白さがある。

魚、風車、ケーブルまで同じ海にある

排他的経済水域の話は、漁業だけでは終わらない。魚を獲る場所であり、水産資源を守る場所であることは確かだが、現代の海にはほかの用途も重なっている。

経済産業省は、洋上風力発電を排他的経済水域へ広げるための制度整備に関する資料を公表している。風が強い海域は、ただ眺める風景ではなく、風車を置けるか、漁業や航路とどう調整するか、環境調査をどう進めるかを考える場所になる。

スマホで海外のページを開くときも、海は画面の外で働いている。国際通信の多くは人工衛星だけでなく、海底を走るケーブルに支えられている。ケーブルは海底を通り、陸揚げ局から国内の通信網につながる。どこを通り、どこで守られ、どこが切れやすいのかは、ふだんの検索画面には出てこない。

海洋安全保障という言葉を聞くと、軍艦や衝突の話だけを思い浮かべるかもしれない。けれど、船が通る、魚を獲る、資源を調べる、風車を置く、ケーブルを敷くという作業も、海の安全と管理に関わる。海の線は、食卓、電気、通信、ニュースの線にもなる。

海の地図を見ると、国の大きさの意味が変わる

海の地図で国の見え方が変わるのは、日本だけではない。フランスをヨーロッパの地図で見ると、本土の六角形に近い形が目に入る。けれどフランスには、フランス領ポリネシア、ニューカレドニア、レユニオン、マルティニーク、グアドループなど、本土から遠く離れた海外領土がある。

フランス政府の海洋境界情報を見ると、そうした島々の周囲にも海域の線が引かれている。パリから遠い太平洋やインド洋の島が、フランス本土とは別の場所で、広い海の管理範囲を生む。陸の地図だけでは、この広がりはほとんど見えない。

ただし、ここでも「海が広い国は強い」と単純に考えると雑になる。遠い島には住民がいて、自治、環境保護、植民地支配の歴史も残っている。海の地図は国の大きさを派手に見せるための図ではない。陸の地図では見えにくい関係を、海域の線として見えるようにする図である。

結論は、「広い海を持つ」ではなく「海の仕事を持つ」

排他的経済水域を知ると、「日本は海が広い国だ」と言いたくなる。たしかに、日本の周りには広い管轄海域がある。だが、この記事の結論はそこで止まらない。

排他的経済水域は領土ではない。ほかの国の船や飛行機がすべて締め出される場所でもない。沿岸国が、魚、海底資源、人工島や施設、科学調査、環境保護について、特別な権利と責任を持つ海域である。

だから、日本の周りの青い海を見るときは、「どこまでが日本のものか」だけで考えない方がよい。どこで魚を管理するのか。どこで海底を調べるのか。どこに風車を置けるのか。どこをケーブルが通るのか。どの島が海域の線に関わるのか。そう考えると、地図帳の青い余白は、急に情報の多い場所になる。

スーパーで魚を選ぶとき、ニュースで沖ノ鳥島や南鳥島の名前を見るとき、スマホで海外のページを開くとき、排他的経済水域という言葉は少し遠くに見える。それでも、その言葉が指しているのは、食卓、資源、電気、通信を支える海の管理である。

日本は、陸地だけで見れば小さな島国だ。海の地図で見ると、単に大きな国になるのではない。魚を守り、海底を測り、島を保全し、ケーブルや発電を考える仕事を、広い青い場所に持っている国として見えてくる。

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